激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
ベランダからまた彼に会ったら私は自分から首に抱き着いてしまうだろう。
心よりも早く、きっと彼に体が反応する。
身体から始まる恋というのは、現実で遭遇するとは思わなかった。
しかも自分自身で体験してしまうだなんて。
夜空に向けて煙を吐いた後、私を見つけると煙草を手に持っていた灰皿に押し付けて微笑んだ。
「美優が、欲しい」
馬鹿じゃないの、と言い捨てて、子どもっぽいことをしてんじゃない、と一喝して部屋に戻ればいい。そう思っているのに、言葉と共に香る匂いに充てられた。
吸い寄せられる。理性が、仕事をしてくれていない。
馬鹿みたいだと頭は分かっているのに、身体は彼を求めていた。
気づけば、走り寄ってその首に抱き着いていた。
彼が背中を抱きしめ返してくれたら、むせ返るような煙草の香りが彼の匂いを阻んだ。
ずっと待っていてくれていたのだと分かったら、この腕が離れようとしなかった。
「――美優」
名前を呼ばれて顔をあげたら、彼の顔が近づいてくる。
そうだ。キスは、頭の中でするものではない。
身体が、動いてしまうもの。止まらないもの。理性なんて、とめてくれない。