激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

二夜しか共にしていない相手に何を言い出すのか。そして何と答えるのが正解なのか、色々と初心者の私には分からない。車に乗って、一回目の信号に捕まった時だった。

お願いだから、軽い言葉は吐かないでくれと思ってしまう彼が再び口を開いた。

「もう少しして、この仕事が落ち着いたら」
「はい」
「……冷静になっているようだし、結婚しようか」
「けっ」
「今すぐ婚姻届けを役所に取りに行こうと言っているわけじゃなく、少し恋人として過ごしてからってことだ」

大きく口が開く。が、言葉を発するためではない。
この男、一周回ってちょっと頭がおかしいのではないだろうか、と不安になったからだ。

「少しづつ美優の荷物を増やしていこうな」
「……っ」
ここで可愛く頷くのが正解だったとしたら、私はきっと間違えた。俯いて、可愛くない返事しかできない。
「か、考えときます」
そんな言葉でも、彼は機嫌よく笑って、嬉しそうだった。

< 117 / 168 >

この作品をシェア

pagetop