激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

 ***

『サンプルのデータです。調香したものは今日中にお手元に届くと思います』

仕事なので、と自分に言い聞かせて宇柳さんに素っ気なく且つシンプルにメールを送ってみた。すると向こうも休憩だったのか数分もせずに返信があった。返信がなければ休憩後電話もしようと思っていたのに。

『ガラス瓶もデザインができている。こちらから見本を送るか、明日打ち合わせできないだろうか』

明日――。というのは迎えに来ると言っていたその時ではないよね。
仕事中だよね。

『社長と確認してみます』
『分かった。また電話する』

 社長は何があってもこの仕事を優先するので、きっと明日は仕事として朝から彼と会うだろう。仕事のメールだけでも、なんでこんなに緊張してしまうのに、仕事中、普通に接することはできるのか今から不安だ。

 社長に打ち合わせの件を伝えに行くと、すぐに会議室を確保してくれた。

「キャンドルナイトの方の配布サンプルはどうでした?」
「ああ。問題ないよ。でも君はこっちの仕事優先でいいからね」

そこまで大きな会社じゃないから、大きな発注となると優先順位が出てくるんだ。
個人からの受付の方が多いし、通販で売っている方は在庫抱えすぎても会社が狭いから困る。今は大量に配るキャンドルナイトのアロマ香袋よりもロット数は少ない高額の仕事の方が乗り気の様子。
 私はたった一つだけの自分の香水を作ってほしっていうオリジナル香水の調香も好きなんだけどね。
「貴方しか調香は分からないんだから、仕事進めといてね」
「……分かってます」
 社長はキャリアも尊敬できるけど、相手によって待遇を変えるのはいかがなものか。
 勿論、お客様の前では隠しているとは思うんだけどね。
< 118 / 168 >

この作品をシェア

pagetop