激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
幸せなまま、一か月が経ったんだ。
彼と出会って二か月。
姉や優希、親と連絡が途絶えても心が落ち着いているのって彼が隣で安心させてくれているからなんだ。
トラウマはなかなか克服できないけど、一歩ずつ自信が付いていくたびに払拭していっている気がする。
たった一日でもその日が人生の変わる大切な日になる。
たった一日で、全て突然失い不幸のどん底に叩き落とされる日もある。
その日が交差して交わりあって、偶々その日が同じで、苦しみと幸せが混ざり合った日だ。
私が人生最大に不幸だと嘆く隣で、彼は幸せだと感じてくれていたのだろうか。
自分でもどうしようもない人間だと自覚している。
お酒のせいだと、香りのせいだと周りのせいにして。
全部全部、自分のせいなのに最低だった。
「あら。美優じゃない」
松永さんの車を待つために、門の外に出たのが間違いだった。
毛皮のコートに真っ赤なワンピース。分厚い唇は薔薇のように真っ赤で艶やかで、マツエグばちばちの大きな瞳。綺麗なネイルを自慢するかのように口元に持ってくると、私をあざ笑う。
嫌な臭い。付けすぎた香水ほど、嫌なものはない。似合ってもない濃い香りにため息が零れた。
「……どうも」
お姉ちゃん、とは呼びたくなくて、驚くほど冷たい声が漏れてしまった。