激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
「久しぶりね。思ったより元気そうじゃない」
ご機嫌な姉が不気味で、門の中へ戻ろうとしたら、彼女はクスクスと笑った。
「その書類、見てくれたのかしら。ふふふ。ごめんね、美優。今回もあの社長は私のことを好きになると思うわ」
自信満々に勝ち誇った笑みを浮かべる彼女は、スマホを取り出した。
「ほら。もう二か月前から貴方の恋人と連絡とってるのよ」
「……はあ?」
振り返ると、スマホの画面をこちらに見せてきた。通話履歴に『宇柳さん』と沢山履歴が残っている。
「男性って運命的なシチュエーションに弱いでしょ。優希は、貴方が紹介した次の日に偶然電車の中で倒れかかったのがあの人だったし」
液晶画面を見ながら彼女は悦に浸って不気味なぐらいうっとりしている。
「この屋敷に迷い込んだ犬が、私の探していた犬だって連絡したらたまたま宇柳さんだったの。そして知り合いのデザイナーに頼んで企画にデザインを送ったのが、たまたま『Madonna』の募集している企画。運命的でしょ」
この人は何を言っているんだろう。
「ふざけないで。ペットは貴方の道具じゃない。ちゃんと心がある。家族のように愛し愛される関係を望む子だっているの。それなのにあんまりだわ。そんなの」
「私に説教しようとしてるの? 生意気」
色々と言いたいことはあるけれど、何を言っても無駄だと分かった。
でも一つだけ、一度宇柳さんが何か言いそびれたような違和感を感じたことはあった。あの一度だけだったけど。