激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
八、キャンドルナイト。
八、キャンドルナイト

 音もなく柔らかい雪が降った次の日だった。


 真っ白に降り積もった雪は、夕方には溶けていき、時折手に触れても分からないほどの雪が降る日だった。

白のタートルネックのニットワンピースに、ローズピンクのストール、お気に入りの蝶が揺れるロングブーツ。

 お洒落よりも温かさを重視してしまう自分が、今は自分らしいと好きになった。
キャンッ
待ち合わせにしていた駅の噴水前で、彼より先に愛しい愛犬の声が聞こえてきた。

「モップ!」

向こうから懸命に短い足で歩いてくるモップが可愛い。駆け寄って座り込んで抱きかかえるとペロペロと舐めてくれてくれる。モップはサンタ服に着替えて暖かそうだった。
モップのリードの先には、スーツ姿の聖さん。

「時間ぴったりだったんですね。仕事は?」
「全力で終わらせた。終わらなかったら松永に任せようかと思った」
「あまりいじめないでください」

 クスクス笑うと彼もご機嫌だった。

「このまま駅前を通り抜けてすぐに、ペット同伴カフェがある。予約しているから行こう」
「わー。モップも一緒だって楽しみだね」

 人混みが多くなったので抱えて歩くと、聖さんが手を差し出してきた。

「繋ぐのは無理ですよ。モップを抱っこしてるから」

 モップがキャリーケースの中で暴れるのが可哀そうなので、抱っこするしかない。

「だから俺が片手で抱える。で、こっちは美優」

ん、と差し出された大きな手に、胸が高鳴った。モップも片手で簡単に抱えてしまう。
 
「モップに、リボンと服も買ったんだが後で見てやってくれないか? 色とか」
「ふふ。勿論です」

 手を繋いで歩く。噴水の中に映った私たちは――誰が見てもきっと恋人に見えるだろう。
それが嬉しい。でももう少し。――もう少し、隣に居ても恥ずかしくないような、可愛い姿になりたいなとも願ってしまうのだった。
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