激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
モテる人って、ロマンチックな台詞で女性を混乱させるのがうまいねって感心してしまった。
彼は微笑んでいたまま固まった後、大げさにため息を吐いた。
「だったら君は少し鈍感すぎると思う」
「……誰にでも吐く甘い言葉に浮かれるほど、呑気な精神状態じゃないからかも」
私も大げさにため息を吐いてしまった。
「ごめんなさい。折角、貴方が親切で乗せてくれたのに。四日後には嫌でも現実に帰らなきゃだから、捻くれるのやめます。楽しませてもらいますね」
ナンパの常套句とはいえ、ここは確かに楽しんだ方がいい。四日後には、嫌でも家族や会社や友達に説明しなきゃいけない。せっかくの贅沢を詰め込んだ五日間を楽しまず捻くれるのは、お金も人生も無駄にしている。
「じゃあ俺が最高の四日間をプレゼントしようかな」
彼は丸い窓を指さした。スタッフの案内で、わざと沈めた船が見える。水質は汚さず、ウミガメが休めるように配置したらしい。
「ここでウミガメが見られるのって珍しいらしい。一週間、一日中潜水して一度か二度見られるぐらいだって」
「そうなんですね」
「もし俺と居る時に見えたら、この後のサンセットディナークルーズに招待してもいいかな」
「え? ディナークルーズってこれですか」
パンフレットで予約したやつだ。これは美麻がホテルを予約してくれる時に一緒に予約してくれた奴だ。彼にそのパンフレットを見せると、苦笑されてしまった。
「こちらは俺が予約したクルーズより賑やかで楽しいかもしれない。新婚旅行客や社員旅行、家族が利用しているし。確か新婚旅行客には特典で、最後にダンスするイベントがあったな」
新婚旅行客が沢山乗っている。
多分五階立てだったので、階は違うとは思っている。けど、落ち着いたクルーズは楽しめないってことか。
「俺の乗るクルーズの方が落ち着いて楽しめると思うから、誘ってもいいかな」
「……えっと」
「傷心中の女性に手を出すほど最低な部類ではないけど、楽しみたいと思っている恩人に最高のシチュエーションを用意したいのは、男としての甲斐性かなってね」
彼は足を組み換えしたあと、余裕そうに微笑んだ。