激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

 二人は手を振って階段を下りていく。

「ああ、こらモップ」

 聖さんが足元でじゃれるモップと格闘しながら見送りしていた時だった。
みどりちゃんは、聖さんの後ろ姿を目で追ったあと、アロマオイルの瓶を壊れ物を触るように恐る恐る触ったあと、その手を頬に摺り寄せて泣きながら笑っていた。
小さくて可愛らしい恋を見た。それが散る瞬間も見た。

けれど彼女は笑っていた。それが少しだけ救われる。
ブンブンと手を振りながら、車から身を乗り出すみどりちゃんを、ぐったりした様子で彼は見送っていた。


「家出したと聞いてひやひやしたよ」

頭を押さえて首を振る彼が、自分の子どもに振り回されている父親のように見えて面白かった。

「女の子の心は複雑なのよ。再会したけど、やっぱり可愛い子だったね」

意地悪のつもりで聞いたのに、彼はにやりと笑う。
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