激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
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深紅の薔薇みたいな空だった。
海も薔薇の花びらが沈んだような色で、電灯が灯る先には船が何隻も浮かんでいる。
クルーズにはムームーが正装らしくて、急いで買った目も覚めるような真っ赤なムームーに、白いハイビスカスが散りばめられたデザインは、我ながら結構冒険したと思う。
ロビーに行けば、彼としっとりとクルーズ。皆がぞろぞろ向かっている船の方へ行けば、賑やかなクルーズ。
どちらが楽しいかなんてわかっている。
ただ自分は、今きちんと正常な考えが出来ているのかと焦ってしまう。
現実から逃げて、楽だけしてる?
私は今、日本に戻れば地獄が待っているから今だけ楽しんでいると割り切れているのかな。
地位もありそうな男性に言い寄られ、舞い上がっていないか。
自分が自分で分からなくなる。
一年後の自分に後悔させないためにも、浮かれないようにしよう。
ロビーで待つ彼が、私を見た瞬間に微笑んだ。
「素敵だね、似合ってるよ」