激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
私が来たことに関しては触れず、服装を褒めるあたり、やはり慣れていると思う。
「貴方もなんでも着こなしてる」
彼にエスコートされ、連れて行かれた船は私が予約していた船の何倍も大きな船。
女性をエスコートしている男性が皆、落ち着いているし年配の人たちが多い。
ハワイを満喫するならば騒げて楽しいクルーズかもしれないけど、しっとりとサンセットクルーズを楽しむならば、こちらで正解なのかもしれない。
海に沈んでいく夕陽を眺めながら、同じ色のワインが注がれた。
モンステラと木製の衝立三連で仕切られたゆったりした空間で、彼がハワイのおすすめの観光スポットを教えてくれた。
やはり時折香る爽やかな香水の香りに胸が騒ぎだした。香水はトップノート、ミドルノート、ラストノートと香りが変化するけど、彼が付けている香水はオーデパルファム。柑橘系の爽やかな香りの、彼の体臭と混じった香りの余韻、ラストノートを嗅いでみたいと胸が騒いでいる。
こんな時に匂いフェチの血が騒ぐなんてどうかしている。
「どうした? 全然俺の事、見てないよね」
寂しげに微笑まれて、焦った。折角楽しい場を提供してくれていたのに。
「いえ、……あー、私って匂いフェチなんで」
調香師だとは言わず、フェチだけを吐露する。
大丈夫。きっと四日後完全に縁が切れる相手なんだから。
「匂いフェチ、ね。俺の香りに酔ってたってこと?」
「そんな感じです。香水の銘柄も分かってます。けど、それだけじゃないような」
「ああ。ワイキキでロミロミマッサージ受けたな。アロマオイルが良質だったけどそれかな」
「なるほど、アロマオイル! それですね」
彼の匂いに心が騒いでいると勘違いしてた。ただのアロマオイルに違いない。