激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

「よければ紹介するよ。予約制だし」
「そうですね。でも自分で色んなお店の香りを嗅いでから決めようかな」

 明日は一日、マッサージ店を練り歩くのもいいかもしれない。

「つまり明日は俺の相手をしてくれないってことか」

 完全に彼の事そっちのけでマッサージ店を探そうとしていたので、曖昧に微笑んだ。

「ここでの私の行動は、誰にも制限できないんです」
「制限ではなくて、」

 彼が言い終わらないうちに、船のデッキから歓声が上がった。
 私たちの席からは海は見えるけれど、話と食事に夢中で気づいていなかった。
 どうやらクジラが船を仲間と思って、ともに並んで泳いでいるらしい。
 私たちもデッキに向かうと、ちょうど水面にクジラの尾が見えた瞬間だった。

「す、すごーい。大きい! 見た? 見ました? こんな近くにクジラがいる!」

 興奮して身を乗り出しそうな私の腰を、彼が支えた。

「危ないから。気をつけて」

 はしゃぐ私を見守る彼がなんだかくすぐったくて、私は耳まで真っ赤になっていた。
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