激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
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花火が落ちてきそうな夜だった。
パンフレットに書いていた通り、金曜日には花火が上がるらしい。
数日前まで他人だった人とベッドに寝そべって、花火を眺めた。
現実を忘れるぐらい熱い夜だったな。
「明日は観光する? 連れて行くよ」
シーツの上に流れた私の髪を掴みながら、ご機嫌そう。
動けないのか動かないのか分からない。
けど、今この瞬間だけは幸せだと感じてしまう。
それほど私は幸せではなかったってことだ。
たった数日が、今までで一番幸せとか、私はどれだけ満たされていなかったんだって笑ってしまう。
弱った今、彼に溺れていく自分は止めなければいけない。
彼に夢中になってまた傷つく未来は、惨めすぎる。
一人で生きていける強い自分にならないと。
「今は何も考えたくないかな」
彼に頭を撫でられながら目を閉じる。
目が覚めたら、全て夢だといいのに。
「全て忘れて、一人で生きていきたいの」
「これが夢だと思ってる?」
「全て忘れる予定だから」
彼に言われて頷くと、苦笑された。
「君が一人で我慢して辛いのは嫌だな」
私の事なんて、全く知らないのに。たった数日、一緒にいただけなのに。
「頑なな君に、必ず会いに行くよ」
彼は私が、つまらない思考に落ちないように、眠るまでずっと語り掛けてくれた。
花火の鳴り響く夜、彼の匂いに満たされて深く眠ることができたのだった。