激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
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「おはようございまーす。お土産です」
空港で買った当たり障りないお土産の紙袋を掲げながら自分のデスクへ向かう。
「電波も入らない秘境に居たので、もし連絡いただいていた方いましたらすみません。お土産、二つ貰って下さい」
私の挨拶に、社長も同僚も微笑んでくれた。後輩の石井くんに関しては、爆笑してくれている。
それだけでも、救われた。私は、本当に恵まれた環境だったんだと改めて実感できる。
お菓子の箱に、「ご自由にお取り下さい」と書きながら、一時的には誤魔化せたこの状況に安堵する。
婚約者の実家に挨拶に行ったと皆が思っている手前、どう説明するか考えてやめた。これ以上、嘘をついたり誤魔化すのが億劫だから時間をおいてから説明しよう。
ロッカーに荷物を置き、電源をオフにしてスマホを鞄の奥へ仕舞った。
仕事中は白衣を羽織るので、服装なんて誰も気にしないと思う。色々ありすぎて、コーディネートなんて考えてなく、手に取ったものを着たので白衣に感謝だ。
適当な挨拶でぽつぽつと出勤している人たちにお土産の声をかけて、白衣を羽織った。