激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

 うちの会社『le parfum』はオリジナルの香水の企画、販売をする会社。個人から企業から仕事先は選ばない。香水からルームスプレーはもちろん、アロマキャンドルやら調香作業がいる仕事なら何でも引き受けている。

 オリジナルの香水もネットショップで販売しているし、社長は女性雑誌で流行りの香水についてコラムを連載中と、意外と仕事は多忙だ。

 おかげで色んな調香ができて私は幸せなのだが、好きな香りを探せるのは幸せに違いないのだけれど、私は今まで、同性であれ異性であれ、人の匂いに魅了されたことは一度しない。
 香水なんて、トップ、ミドル、ラストと香りの変化や余韻によって段階毎に香りが変わるのに、色んな人と出会ってきたが、ときめく匂いにも香りにも出会っていなかった。


 だからあの夜、私が魅了された香り。
 このまま離したくないと、掴んだ香り。
 本能で選んで、理性が仕事してくれなかったのは、恋愛の経験不足だったせい。
 一夜の関係を望んでいた相手に、私が一方的に
香りに溺れ、本気になれば迷惑になることは分かっている。
 だから何も言わずに別れて、日常に戻る方がきっと楽なんだ。

 今頃彼も、私との数日なんて忘れて『みどり』さんにお土産を渡していることだろう。
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