激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
考え事をしながら工房へ向かっていると、社長がわざわざやってきた。
秘書まで連れて、穏やかではない様子に思わず身構える。
「新しい仕事なんだけど、頼めるかな」
おっとりした喋り方の、糸目の社長が私を指名すると、笑顔でこう言った。
「うちの会社の創立以来の大手からの依頼だから、失礼のないように」
「急ですね。今は個人案件ばかり引き受けてますので大丈夫ですよ」
「そう言ってもらえて良かったよ。沢山予算入れるから君が満足いくと思うよ」
社長の言葉に、胸がときめくのが分かる
「つまり、私が海外から輸入しかった香料、じゃんじゃん輸入できるかもって事ですね」
その言葉に、社長の方を見る。私の姿勢は、急に針金のようにまっすぐになったに違いない。
「もちろん、先方様のご要望範囲内だけどね。どうする?」
「企画書、見せて下さい」
「ああ、君のアドレスにファイル送っているよ。急だけど今日先方がお見えになるから直接話したいらしい。午前中だから調整しておいて」
「わかりました」
「サンプルも何個か用意できるかな」
「はい。大丈夫です」
工房の大型冷蔵庫へ向かう。私の棚にほかんしてあるのは練り香水。
やはり香水は気分が上がる。
今日は気合を入れるために柑橘系のすこし眼が冴えるような、甘酸っぱい爽やかな香りを身に纏っている。