激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
変な胸騒ぎが気のせいだったと、安心した私がメニューを手に取った時だった。
「相手は俺だ。責任もって、彼女を幸せにしたい。俺たち別れよう」
吐き気がした。気持ち悪かった。
二人は被害者のように傷ついた顔で俯いている。
ふざけるなよ、傷ついていいのは私だけだ。
サンタさんがくれたプレゼント。姉が私のぬいぐるみの方が好きだと言えば、両親は交換してあげてと私に我慢を強いていた。
私がデザイナーに憧れていると口を漏らしたら、姉が次の日にはデザイナーの専門学校の推薦入学を受けると親に言っていた。
次は私の恋人まで奪うのか。
気持ちが悪い。優希も先に生まれただけのこの人間も、全て気持ちが悪かった。
その日は冷静に話せる自信がなかったので、後日、仲人をしてくれるはずだった当時のバイト先のオーナーに話し合いに入ってもらうとことにした。
優希は、オーナーの名前を出すと顔色を変えて謝罪してきたけど、「貴方たちは加害者だから私に意見しないで」と自分でも驚くほど冷たい言葉が出たのだけは覚えている。
結婚式用に貯めていた共通の通帳を渡されたので、素直に受け取る。
「二度と顔も見たくない。誰からも祝福されると思わないで」
姉とも思いたくない。だって姉は、私の一番欲しかったものを奪うと、優越感で歪んだ笑みを浮かべていたんだから。
だから私は姉の勝ち誇った顔を見たくなくて、さっさとカフェをあとにした。