激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
「調べたけど急ぎの納期もないでしょう。あっても、貴方には今は『Madonna』の企画を優先してほしい」
「え、えええ」
「今日の仕事は石井くんにお願いして。出向とはいっても、今日だけだから」
あまりに突然のことで、奥でサンプルを確認していた石井くんまで驚いて飛び上がっている。
彼の会社が、アロマを作るにあたり自分の会社も知ってほしいと、見に来てほしいらしい。
この企画を担当する私が行くのは当然だけど、こちらの都合も考えずに急な依頼もどうかと思う。
「分かりました」
昨日の今日でどんな顔をしていいのか分からない。
公私混同だけはせず、仕事中は取引相手として接することに努めよう。
それにしても、もう少し早く教えてくれたらきちんとした服装で伺ったのに。
スーツも用意していないし、カジュアルな通勤服。一度着替える時間はあるのだろうか。
「そういえば、宇柳社長が守屋さんにと」
渡された紙袋は、資料にしては軽くて不思議だったけれど、ロッカールームで開けて驚愕した。
私でも知っているブランドのフォーマルなワンピース。黒のレースにピンク色のストール。出勤してきたカジュアルな服よりも、出向するならばこちらの方が似合うのは分かってるけど、素直にはなれなかった。