激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

 ***


「守屋さん」

大手ステンドグラス会社『Madonna』の本社、ロータリーへ到着すると、秘書の方が出迎えてくれた。くせっ毛のふわふわした髪の、人懐っこそうな男性だ。

「秘書の松永です。副社長は朝の会議中でして、もう終わるはずです」
「ありがとうございます。今日はよろしくお願いいたします」
「はい。よろしくお願いいたします」

 吹き抜けのエレベーター。エレベーターを上がれば四季が描かれたステンドグラス。有名建築士設計の建物か、一階には噴水のある庭。ホテルと見間違うような受付カウンターやカフェ。カフェは有名老舗カフェで、どこを見ても隙が無い。

「遅くなった。すまない」

 エレベーターを、ジャケットを羽織りながら降りてきたのは宇柳さんだ。
 私の服装を見て、残念そうに微笑んだ。
 服を贈ってもらったって、着れるわけないのに。

「あの、社長にご挨拶を」

 秘書にキーケースを渡している宇柳さんに言うと、彼は首を振った。

「父はハワイ支社。海外展開に力を入れているからね。実質、日本の社長は俺なんだ」
「そうなんですね」
社長の立場の人が、わざわざうちの小さな会社に来てまで打ち合わせしに来たんだ。
そんな身分とか威厳がないから副社長って言われてもまだ不思議な感じがする。
「で、まずはどういった内容の話し合いを?」
「ああ、まずはうちの技術や特性を知ってもらおうかな」
「副社長、お車の準備ができました」

ロータリーから松永さんが助手席のドアを開けて待っていてくれていた。
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