激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

***

 彼に案内されて訪れたのは、美術館。
 彼の会社が作っている歴代のステンドグラスの展示がされていて、歴史的に価値のあるものもあるらしい。

 ビルが聳え立つ中、美術館の大きな門を通り抜ければ木々に囲まれた石畳の道を通り抜け、旧教会を美術館に改造しただけあり、入ってすぐ目に飛び込んでくる壁一面のステンドグラスとアンティークなパイプオルガンは息を飲むほど美しかった。

 技術や技法、そしてガラスの種類など説明され、気付けばあっという間に一時間過ぎていた。

「ここはカフェもあるんだ。良ければランチでも」

 昨日は私に考える暇を与えないほど口説いてきたので身構えてきたけど、彼も仕事を徹底してくれている。
 肩すかしのような安心したような、微妙な気持ちだ。
 美術館内にあるカフェは、チーズの香ばしい匂いがキッチンから香って食欲をそそってくる。
 大きな暖炉と庭に釜戸、本格的なピザが楽しめるようだ。
 アスパラガスとベーコンのピザと、デザートに苺のジェラートを頼むと、胸が躍り出しそう。

「えーっと宇柳さんは何を頼みました?」
「このホットサンド。意外と人気なんだ」

 私が両手で開いていたメニューを、彼は覗き込んだ後、指さした。
 今日の香水も良い。毎日会う度に、香りを変えてくれているのは、偶然なのかな。

「それより、初めて名前を呼んでくれたね」
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