激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
「宇柳さんって隙がないっていうか、――なんか悩みとかなさそうですね」
「褒められている気がしないんだが、お礼を言っとこうか」
「それで貴方は一度抱いたら、満足してくれるの?」
本当に私がこの人は好きなのか、珍しいタイプだから楽しんでいるのか。
お姉さんと重ねて、同情してくれている気もする。たった一度の出来事で私のことを探していたのも信じられない。
新しい恋愛なんて、考えたくもないのに。そんな私の横で、とても整った顔の俺様な王子様が運転している。そして私の身体を酔わせるような香りを放っている。
「満足していないから、こうやって君の傍にいるんだが」
苦笑されればそれまでだ。
ラスボスに、棒切れ一本で挑んでいるような気持ち。
しかもラスボスが自分に好意的だった場合、私はその頼りない棒切れで彼と戦えるのであろうか。
「何を考えてるんだ?」
「……ゲームの攻略方法です」
「あのさ、美優って典型的な理系女子なのか理屈っぽいな」
横目で私の様子を伺っていた彼がそんな言葉を放った。
「なっ」
「キスは、いちいち頭で考えてするか? 相手が好きだからするだろ?」
「え、あ――んん?」
頬を触られたと思ったら、一瞬だった。一瞬で顔が近づいてきて、唇が触れた。
さっきまで煙草を吸っていた唇が、私の唇を啄む。
「キスは本能、だろ? もう一度抱きたいっと思う気持ちも、本能。美優が俺の香りに魅了されてるって言ってたのと同じじゃないか」
「キッ」
「キスぐらいでいちいち騒ぐ関係ではないって気づこうか」
こ、このやろう。
ただの唇を合わせるだけの行為。