激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
「じゃあさ、なんか大きな仕事が入ったから式は延期って感じでいいじゃん。まだ招待状送ってないしすぐに皆の話題からは忘れられるよ」
高校時代の友達にはそれでいい。あとはバイト時代の人たちはオーナーに任せて、会社は社長が味方になってくれる。
一時は絶望でしかなかったけれど、居場所は無くならなくて済みそうだ。
「結構さ、あんたは辛い状況だったわけだけど。落ち着いてみればなんとかなるなってわかるのよ。あんときは冷静は判断は無理でもね」
美麻の言葉が五臓六腑に染みわたる。そうなんだよね。あの時はただただ、姉の勝ち誇った顔と優希の私への同情的な接し方に絶望しかなかった。
きっとあのままでは性格がひねくれ、嫌な人間に落ちていきそうで怖かったな。
「美麻には感謝しかないよ。ドンペリとか頼む?」
「あはは。こんな居酒屋にそんな飲み物はさ、……え、あるじゃん」
二人でメニューを見て、お酒も入っていることもあり爆笑してしまった。
***
終電まで飲んだあと、タクシーでマンションまで帰った。
ハワイには行くし美麻に驕ったし、タクシーで帰るし散財してしまった。
でももう挙式代を貯金する必要ないんだから、少しぐらいはいいよね。
「美優っ」
タクシーから降りようとして、マンションのオートロックの前に親がいるので固まった。