白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

 私は手の中の絵を見た。
 断らないといけないのに、すぐに断れなったのは、この絵のせいだ。

 パリの街並み。優しい雰囲気、そのものだ。


 絵を握り締める私を見て、琥白さんは私の頭を撫でる。

「それ、気に入った? 考える時の参考に、持っていればいい」
「……ありがとうございます」

 その言葉に甘えよう。断るとしても、これを持っておくくらい、いいよね。
 もう一度絵を見て微笑む。

 すると、琥白さんは、
「遅くなったな。ホテル取ってるから行くか」
と言った。

「ホテル……?」
「今更何か問題あるか?」

(今更って……)

 確かに、家でも一緒に寝てるし、今更ではあるんだけど……。
 少しずつ少しずつ、引き返せなくなってるみたいで怖い。

 そう思っていると、琥白さんは私の手を優しく握る。琥白さんの手の熱が伝わってきて、思わずコクンと頷く。
 すると、琥白さんは嬉しそうに笑って、ちゅ、と私の唇に軽いキスを落とした。

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