白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
そのまま会計をしてホテルを出ると、琥白さんは愛華さんを野中さんの運転する車の後部座席に座らせる。車の中を見ても、今日は秘書の神尾さんはいないらしい。
私はそれを見て、足を止める。そして口を開いた。
「琥白さん、このまま愛華さんだけ送ってもらえませんか?」
そう琥白さんに言うと、琥白さんの眉が不機嫌そうにぴくりと動く。
「何言ってるんだ、ふたばも行くぞ」
「私ちょっと用事があるし……先に愛華さんだけ送ってあげてください」
「こんな時間に、酔っぱらって何の用事だ。乗れ!」
そう言って琥白さんは強引に私の腕を掴むと、私を愛華さんの横に押し込む。そして自分も私の横に乗り込んだ。
「いたっ! この乱暴者!」
「文句あるか」
「あるに決まってます!」
「酔ってるふたばを一人だけで帰せるわけないだろ、バカか」
「ば、バカって……! 子どもじゃないんだから大丈夫ですよ!」
「子どもじゃないから余計だ。このバカ」
「ま、またバカって! バカって言う方がバカなんですから!」
私が叫んだとき、愛華さんがじっと私たちを見ていることに気づく。
「あ、愛華さん? 気分悪いですか?」
「……琥白、そんな言葉遣いするんだ」