白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

「どうして?」
「だって……まだ入籍もしていませんから」
「なら約束です。来月、入籍後すぐにまたこちらに来ましょう。その時は、きちんと覚悟してきてください」
「……どうしてここに? ハネムーンには行かないってお話でしたよね」
「私もここが気に入ったからです。もう一度、次は夫婦としてふたばさんと訪れたいと思ったんです。そしてあなたをここで抱きたい。だめですか?」

 琥白さんは言うと、私の目を見た。
 私はその内容に一瞬ためらったものの、息を吸い、口を開く。

「私は……琥白さんとハネムーンに行けるならどこでも最高です」
「はは」
「冗談だと思ってます?」

 思わずムッとして返すと、琥白さんは目を細めた。

「いいえ。では約束です」
「はい」
「よかった。楽しみです」
「私も」

「……このままここに一緒にいると、今すぐにあなたを襲いかねませんので、今日はこれで失礼しますね」

 琥白さんはさらりととんでもないことを言うと、微笑んでくるりと踵を返し、歩き出した。

 私は中庭を歩いていく琥白さんの後姿を眺めて小さく息を吐く。

 そして、自分の手をそっと持ち上げた。
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