白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

 愛華さんがつぶやいて、私は首を傾げる。
 そうか……琥白さん、外では清廉潔白で優しかった。間違ってもこんな言葉遣いしない。

 これに慣れてたから全然違和感なかったけど。

(愛華さん、幻滅してしまっただろうか……? 琥白さんのこと、これで嫌いになったらどうしよう……)

 それがやけに不安になって、私は途中で、

「あ、私やっぱりちょっと買い物によっていきたいからこのあたりで下ろしてください」

と運転手の野中さんに言う。

 しかし、

「だめ。ふたば。あとにして」

とピシャリと琥白さんに断られる。
 そう言われてしまえば、琥白さんの運転手さんである野中さんが止まってくれるはずはない。車はそのまま走っていた。

「でも」
「あとで俺が付き合うから。もう黙って乗ってて」

 琥白さんの声が地を這うように低い。
 その声に驚いて、私は思わず口を噤んだ。

(琥白さん、なぜか……怒ってる?)
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