白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
速足で歩いていると、
「あ、あの! 少しいいですか?」
と声を掛けられ、振り向くと、先ほど私より少し先にプリンを買っていた男性がそこに立っていた。
「へ? わ、私ですか……?」
「2つですよね? よければどうぞ」
男性はそう言い、袋の中の小さな箱を私に渡そうとする。
「いえ! 買うかどうかも悩んでいただけなので! 本当に気にしないでください!」
私が慌てて手を胸の前で横に振ると、その男性は困ったように頭を掻く。
よく見てみると、琥白さんや兄と同い年くらいの男性で、人懐こそうな雰囲気が見た瞬間分かるくらいの優しそうな男性だった。
「実は僕、さっきショーケース見てたらやけにいっぱい食べたくなって、欲張りすぎて4つも買ってしまって……確実に買いすぎちゃったんです。よければ、もらっていただけると助かります。……って急にこんな風に声かけて気持ち悪いですよね。このプリンは本当にさっき買ったばかりのもので、変なものではありませんから。あなたさえよければ」
そう言ってその男性は頭をまっすぐ下げた。
(変な人……)