白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

「んっ……」

 いつの間にか二人の顔の距離が近づいて、そのまま唇を合わせる。
 琥白さんは感触を楽しむように、ちゅ、ちゅ、と何度も口づけた。

 そうしていると、ふわりと懐かしい香りが鼻をくすぐった。

「どうした?」
「……いや。ただ、懐かしい香りがするなぁって」
「そうか?」
「この香り、好きです」

(カヌレのせいだろうか?)

 そう思って私が言うと、琥白さんが少し顔を赤らめて、口元を手で覆っていた。
 どうしたんだろう? と思って琥白さんを見て、先ほどの自分の言葉を反芻する。

(もしかして、好きですって言ったから?)

 それに気づいて私まで顔を真っ赤にすると、琥白さんもさらに赤くなる。

 私は慌てて叫んだ。

「す、好きですって、香りだけですよ!」

 その私の様子に琥白さんは楽しそうに、はは、と笑うと、「それでも嬉しい」と言ってもう一度私にキスをする。
 そして、そのまま琥白さんの唇が耳元を這う。

 それだけで、ゾワゾワとした熱くて胸が苦しい感覚が身体を駆け巡った。
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