白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
11章:俺だけを
―――全部知ってほしい。俺のことも。それにふたばのことも全部知りたい。
あれは琥白さんの本心だった。
それがよくわかったし、私もそうしたいって思ったけど……。
私が会社のビルを出たとき、琥白さんの秘書の神尾さんがそこに立っていた。
それが琥白さん本人ではないことに、少しほっとしている自分に気づく。
今朝、起きた時いつものように琥白さんはそばにいてくれたけど、その笑顔が少し沈んだように見えて、私はなんだかそれが心苦しく感じてしまったのだ。
「ご自宅までお送りします」
「今日は、琥白さんは?」
「今日は少しお帰りが遅くなられるので先にということです」
私を後部座席に乗せ、自身も車に乗り込むと、神尾さんは口を開く。
「もうすぐご入籍ですね」
「……」
気付いたら、もう入籍は一週間後に迫っていた。
式は落ち着いたら、と先延ばしにしているのだが……。
その『期限』を考えると、やけに苦しくなる。
わかっていたし、どうにかしないととは思っていたのに。