白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

 その日、琥白さんが家に帰ってきた時間は11時を回っていた。

「琥白さん? おかえりなさい。遅かったですね」
「あぁ、ただいま。よかった、起きてたか」
「だって……」

 私はつぶやく。
 毎日琥白さんが眠るとき近くにいすぎて、いないと変な感じがするのだ。

 私が言うのをやめると、琥白さんは嬉しそうに微笑んで、「待ってろ。シャワー浴びてくるから」と私の頭を軽く叩いた。
 いつも通りの琥白さんにほっとしている自分がいる。

「はい……」

 私は琥白さんに触れられた場所を手で覆って、その熱をもう一度反芻する。
 そして、少しして琥白さんのバスルームでシャワーを浴びる音が聞こえると、やけに緊張してきた。

< 144 / 232 >

この作品をシェア

pagetop