白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
「でも、2年前に久しぶりに会ったふたばはどうだ」
琥白さんは言葉を続ける。「薄っぺらい笑顔浮かべて、なんでもはいはい、社長の思惑通りにしか動かなくて。言うこともなすことも全部社長の思い通りで、死んだような顔して生きてた」
「……そんなこと、ないです」
「それに……婚約の話をする前。一度道端で見かけたんだよ、ふたばを」
「……え?」
「車にひかれそうになった猫を助けてた」
「あんまり覚えてません」
「あの時、俺は……」
琥白さんはそう言って悔しそうに唇をかむと、息を吐く。
そして表情を一変させて、目をすっと細めて私を見た。
「ま。唯一、俺から婚約破棄させる作戦を練ることだけは楽しそうにやっていたそうだがな」
「えぇっ……まぁ、それは確かに……途中からちょっと楽しかったですけど……」
そう言いながらどんどん声が小さくなっていった。
実際、久しぶりに会った琥白さんが嘘くさすぎて、その仮面を剥いでやろうと必死だったのは確かだ。
途中から琥白さんが浮気して、私に謝る姿を想像して楽しくもあったりした。
さすがにそうとは言えなかったが、琥白さんも分かっていたらしい。
(本当に何でも知っていたんだな……)
私が琥白さんをちらりと見ると、
「まったく……」
琥白さんはそう言って、息を吐いて私の頭を軽く叩く。