白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
「そういえば昔、金魚飼ってたろ」
「あぁ、夜店の? あれから結構長生きしたんですよ、二匹とも。それで今、会社の総務の水槽にいるのがその二匹の孫で8匹います」
あの金魚、一匹は弱っていたけど、泣く私を見て兄が色々調べてくれて、一旦二匹を離して、それからまた慣らして……と根気よく育てたのだ。
結局、二匹は仲良くなって、子どもも生まれた。
私が言うと、琥白さんが心底驚いた顔で私を見た。
「え……そうなのか? そもそも、あれ、雄雌だったのか……」
「はい」
「そっか」
琥白さんは嬉しそうに微笑む。
「どうしたんですか?」
「いいや、俺も見習わないと、と思っただけ」
私が首を傾げると、琥白さんは微笑んで当たり前みたいにキスをした。
「んぅっ……」
それから長い長いキスを交わして、琥白さんはまた私を抱きしめる。琥白さんの香りと、それから、やけに速い心臓の鼓動が伝わってきて、私はそれを感じてゆっくり目を瞑る。
「……早く俺が好きだって自覚してくれないかな」
琥白さんはそう言うと、もう一度私にキスをした。
私は琥白さんの唇が離れたとき、なんだかとても名残惜しくなってしまって、結局自分から琥白さんの唇に、もう一度自分の唇を重ねていた。