白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

 兄は、近くの8階建てのビルの屋上まで登っていく。私はその後ろをなんとかついていく。

(もしかして、最近日本に帰ってきてて、これまでここにいたのだろうか?)

 そう思って、私は兄を追っていた。
 パリに行った時しか会わなかったが、それ以外の日、兄が何をしているかは私はよく知らなかった。

「お兄ちゃん!」

 屋上まで追いついた私が言うと、兄はくるりとこちらを振り返る。
 少し暗い表情だが、確かに兄だ。

「ふたばか」

 兄はほっとしたように微笑んで、その兄の笑顔に私も胸を撫で下ろした。
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