白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
私は兄の目を見た。
兄の目が揺れたのがわかったけど、私は兄に聞く。
「お兄ちゃんは、どう思う?」
はっきりと聞くと、兄は涙を流した。
「どうしたの? あ、もしかしてうれし泣き?」
私は苦笑して、兄に近づいてハンカチを差し出す。
その手を兄が掴んだ。
「……だめだよ」
「え?」
「僕はふたばのために生きてきた。ふたばが小さな時からずっと。そんな僕を見捨てて琥白と? それ、冗談だよね」
兄の目は仄暗かった。その目に吸い込まれそうになる。
「お兄ちゃんが私のためを思って、ずっと頑張ってきてくれたことも、わかってる。わかってるけど……」
ーーーだから、結婚も躊躇った。幸せになることも、琥白さんといることも、全部。