白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
その日、俺はホテルのバーで、ある男と待ち合わせしていた。
そいつは、いつも通り飄々とやってきて、こっちの気なんて知らずに、おぉ、さすがにいいところだねぇ、とか呟いてる。
「おい、晴信。こっちだ」
俺はカウンターから手を挙げて、待ち合わせていた相手を呼んだ。
「琥白が僕を呼び出すなんて気持ち悪いな」
そう言いながら、人のいい笑顔を浮かべて、俺の隣に晴信は腰を下ろす。
「あー……ちょっとな」
「じゃ、ここおごりね」
「もちろん」
「言っておくけど、僕は相当酒は強いよ」
晴信はそう言って笑った。
俺に気を遣わせないように、そう言っているのがわかる。昔からこう言うところのあるやつだ。
「好きなだけ飲め」
「ありがとう。じゃあ、とりあえずテキーラ」
「とりあえずがそれって……」
酒に強いのは本当らしい。