白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
「彼女の気持ちが少しでも琥白に向いてきたら、僕が直接会ってみるよ。僕のことは覚えてないだろうし、もちろん琥白の知り合いとも言わずにね」
「……」
「でも、それまで僕は会わないからね?」
そう言って、晴信は真剣にこちらを見た。
それはきっと俺がこれから動くための言い訳を一つでも作るためだろう。
晴信はため息をつくと、
「なんで僕って、恋愛に不器用な友人ばっかりいるのかなぁ」
と呟いて、「テキーラおかわり」とまたテキーラを頼み、結局5杯ほど飲んでも顔色一つ変えずに微笑んでいた。
俺はというと、どうやって彼女の隣にいようか、とか、どうやってこちらに彼女を振り向かそうか、とか、そういうことばかりを考えていた。
そして俺に向けて笑顔を見せる彼女を想像して思わず笑みが溢れ、それから、晴信の言うようにこれが恋なのかと感慨深く思う。
―――結局、俺はそのあと、なかなかこちらを向かない彼女にどんどん嵌っていくのだけど……。