白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
16章:発熱

―――あなたのお兄さんはもういません。2年前に亡くなったんです。

 ねぇ、それは嘘でしょう? お兄ちゃんも一緒に、私に嘘ついてるだけだよね?


 足をひねった私を、琥白さんは驚くほど心配して、私を抱えて病院に駆け込んだ。
 幸い骨折はしてなかったけど、ひどく足をくじいたみたいで腫れてきていて、一人ではうまく歩けなかった。

 処置が終わって、病院のロビーで座らされていると、琥白さんが薬を受け取ってこちらまでやってくる。

「琥白さん、お兄ちゃんは?」
「……ふたば。さっきも言ったけど、昌宗は2年前に死んだだろ?」

 その言葉に泣きそうになる。なんで、みんなしてそんなこと……。
 私は耳をふさいで首を振っていた。

「……うそ! 私、何度も会ってた」
「死んでないと思いたかっただけだろ。実際、ふたば以外だれも昌宗に会っていない」

「それはお兄ちゃんが失踪して私にだけは連絡くれていたから! なんで琥白さん、そんなひどい嘘つくのよ! 私、今日だって会ったのに! それで琥白さんの事、お兄ちゃんに話してっ……!」

 お兄ちゃんに、よかったなって笑ってほしかった。でも……。

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