白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

 兄は、全く後悔のないような楽しそうな笑顔で、

「痛いとこ突くねぇ。そう、僕は経営とかそういうのに丸きり向いてなかった」

「お兄ちゃんが経営者って、似合わなすぎて笑っちゃうもんね」
「そうそう。そういうのは叔父さんが得意分野だからね」
「適材適所ってやつだ。……だから、今私も自分にできることをしてるだけ」

 私が言うと、兄は頷いた。

「ふたばは僕に似て、突っ走るところがあるからね。無理だけはしないでよ」

 私はその言葉に思わず笑う。

「無理なんてしてないわ。これでも私は結構楽しんでるのよ。お兄ちゃんも知っての通り、私、そんなにいい子じゃないし」
「そんなことないさ」

「それに琥白さん、昔の事、これっぽっちも覚えていないの。すごいわよね。昔と全然雰囲気も違うし……」
「琥白が?」
「うん。まるで全部嘘で固めたような人になってて驚いた。いつも私に愛情あるふうに微笑んで話しかけてくるけど、嘘くさくて」

 これは、本当にいつも感じていることだ。
 中学までの琥白さんは少なくともあんな雰囲気ではなかった。横柄で、口も悪かった。

 それを覚えている私は琥白さんが優しい言葉を並べるたびに、背中が痒くなる。愛してるだとか、好きだとかの言葉も薄っぺらくてたまらない。

 私が言うと、兄は苦笑した。

「それはお互い様なんじゃない?」
「確かに」

 そう言って二人、笑い合う。
 やっぱり何でも言い合える兄と話すのは楽しい。
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