白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
ーーーその日、琥白さんに抱き上げられ過保護に連れて帰られた私は、深夜に39度の熱を出した。
琥白さんは一睡もせずに、隣で冷たいタオルを替えてくれたり、私の汗を拭いてくれたり……。
それからずっと私の両手を握ってくれていた。
ぼんやり目を開けると、琥白さんはいつものように私の頭を優しく撫でる。
「ふたば、気持ち悪くないか?」
「はい」
「知恵熱かな……心配だな」
琥白さんはつぶやき、ペットボトルのスポーツドリンクを私に渡す。
「これ、のめ」
「……いらない」
「さっき工藤にも連絡したら、塩分と水分取らせろって。ちゃんと飲んでくれないか? 心配なんだ」
ペットボトルにストローをさし、それを飲まされる。
でも、それは喉に心地よく通って、飲みたくないって思っていたのにいつの間にかたくさん飲んでいた。
それから琥白さんはまた私の両手を握ってそこにいて……
そうされると、私は昔のことを思い出していた。
「あのときも……こうしてましたか? ピアノのコンクールのあと」
「え?」
あのとき、ピアノのコンクールのあと私は熱を出した。
あの時は、琥白さんとお兄ちゃんが二人で近くにいてくれた。片方ずつ手を握って。
琥白さんは、そうだったか? と言いながら何かを思い出したように微笑む。
ーーー琥珀さん。私……。
その微笑みを見ていると、ふいに自分の気持ちが口から漏れ出た。
「私、琥白さんのこと、やっぱりもう好きだって思ってます……」
少し驚いた琥白さんの顔を見て、私は思わず笑って……握られている琥白さんの手を強く握り返した。