白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
「ふたばは私の妻としてこれから忙しくなるし、手伝ってほしいこともあります。それは、ふたばにしかできないことなんです。急で申し訳ありませんけど、私の妻には、もうそちらに出勤してほしくないと思っています」
そして少しの沈黙のあと、琥白さんはにやりと笑い、
「そうですか、それはよかった」と言った。
―――あの叔父のことだ、別に私を辞めさせるくらいどうってことないだろう。
(でもなんで琥白さん、突然そんなこと……!)
驚きと怒りで琥白さんを睨むと、琥白さんは、さらに続ける。
「あ、あと、もう金輪際ふたばと直接連絡をとらないでいただきたいんです。呼び出すなんてもってのほかです。……え?」
叔父に何か文句を言われているだろうことはよくわかった。
しかし琥白さんは突然低い声になり、
「あぁ、いざとなれば私はそちらへの融資の『すべて』を引き上げてもいいんです。すぐに引き上げなかったのは、あなたのことを一言も悪く言ったことのないふたばのおかげですよ?」
と脅すような口調で言った。
それはそれはとても冷たい声で、隣で聞いているこちらまで肝が冷える。
私が固まったところで、叔父も固まっているのか、琥白さんはにこりと微笑むと、
「ご理解いただいて感謝します。では、失礼します」と言ってすぐにスマホを切った。