白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

 数日後、マンション近くのカフェに愛華さんに呼び出された。
 少し緊張したまま向かったが、そのカフェのテラス席で私を見つけて微笑んだ愛華さんの笑顔を見てほっとした。

 私が席に着くと、愛華さんはまた笑って口を開く。

「結婚おめでとう。聞いたわよ。ふたば、天橋不動産辞めたって」
「お、怒ってましたよね? 叔父さん……」

 私が言うと、愛華さんは楽しそうにケラケラ笑った。

「そんなの気にすることないわよ! なにかあったら私に相談しなさい。天橋社長なんて、かわいい顔して甘えておけば手のひらの上でコロコロ転がってくれるんだから!」

(愛華さん……なんてあっさりした性格……)

 でも、私はその性格に救われた気がした。

「あ、ありがとうございます」
「それにふたばは甘えないから、あっちもやりにくかったのよ」

 そう言って、愛華さんは苦笑する。
 確かに、私は叔父に甘えたことを言ったことはなかった。

「……そうかもしれないです。でも、もちろん感謝はしてます。父が亡くなってから大学まで……金銭面でも援助してくれたのは叔父さんだから」

 私が言うと、「ほんと、ふたばは欲がないわねぇ」と愛華さんは苦笑する。
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