白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

「婚約破棄したいなら、ふたばがどうしようもない女だってところを見せたら?」
「それじゃ、うちの会社やうちの叔父さんの品格まで疑われるでしょう? だから、あっちが全面的に悪いってパターンで婚約破棄してもらわないと」
「だから、琥白が浮気するように仕向けているってわけ?」
「もちろんバッチリ証拠も確保するつもりよ」

 私が鼻息荒く言うと、兄は、
「でも肝心なこと忘れてない? 琥白、浮気してくれないんでしょ。ふたばが言ってた愛華の作戦ってやつも失敗したんだよね」
と、すべて見透かしたように言って微笑んだ。

「なんでそのこと知ってるの……」
「あはは、それは秘密」
「まさか日本に私以外にお兄ちゃんがここにいるって知ってる人、いないわよね?」
「もちろんだよ」
「ほんとにぃ?」

 兄はなんだかんだ顔は広い。
 でも、本当に誰かと連絡をとっていたらそこから漏れかねないのに、わかってるのだろうか。

 不安な顔を隠しもせずに兄をそのまま見ると、兄は、大丈夫だよ、と微笑んだ。

「っていうかさ、その作戦そもそも失敗してない? 琥白は浮気なんてしなさそうだよね」
「そんなことない。お金と地位のある男の人は絶対浮気するよ。お父さんみたいに」

 私がぴしゃりと言うと、兄は閉口する。

 そう、本当に『よくある話』で……私たちの父は浮気を繰り返した。
 だから私と兄は、母が違う。
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