白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
19章:未来の香り
琥白さんはパリでって言ってたし、その日を私は心待ちにしていた。
今、パリに行くことは少し怖くもあったけど……でも。
―――出発前日。
「準備できた?」
「あ……はい」
スーツケースに荷物を詰めていた私は、琥白さんに聞かれて頷いた。
琥白さんは隣に来て私の両手をぎゅうと握ると、私を自分の方に向かせる。
「……大丈夫か?」
そうされることで、ほっとしている自分に気づく。
琥白さんはいつだってこうして、私のそばにいてくれた。大丈夫だよって、言葉で態度で示してくれた。
「はい」
「思い出してから行くのはじめてだろ。どうしてもだめなら、無理しなくていいんだ」
琥白さんはそんなことを言う。
私は琥白さんの手を握り返すと、
「大丈夫。琥白さんがいるから」
と笑った。