白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
私が唇をかむと、兄は顔を上げて扉の方を見た。
「ねぇ、誰か来たみたいだよ?」
扉の方を見てみると、「ふたばさん?」と声が聞こえる。
紛れもなく、琥白さんの声だった。
私は慌てて兄を部屋の窓から追い出す。
「裏から出られるから! 早く出て!」
「はいはぁい」
「また来るから。絶対に」
「うん。待ってる」
兄は笑って私の頭を撫でる。それから私の両手を優しく握った。
まるで子ども扱いだけど、兄にこうされることは昔から好きだった。それだけで心が落ち着いた。
すると兄は楽しそうに笑って言う。
「こんなとこからコソコソ脱出するなんて、なんか映画みたいだね」
「バカなこと言ってないで早く行って」
あぁ、兄は本当にバカだよなぁ。
それでも、私には大事な唯一安心できる家族なのだ。