白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
最終章:白檀の王様は双葉に芳しさを気付かされた?(side 琥白)
これまで何でもそつなくこなしてきた。
仕事だって大変なことはあったけど、それは小さなときから長く覚悟を決めてきたことで、そのこと自体は自分に向いていたと思う。
ただ、昌宗とふたばに関わるたび、俺は何度も自分の無力さに唇を噛んだのだ。
昌宗が失踪した日。
昌宗の葬式の日。
そして、ふたばが死ぬのを全く恐れずに猫を助けたのを見た日。
晴信に相談して、婚約まで持ち込むのは難しい事ではなかったが、それからが予想していた以上の事ばかり起こった。
ふたばは婚約破棄しようと思っていて。
同棲しても自分の本心は全く吐き出さなくて。
会社でも家でも、いつだって自分がいなくなっていい準備をしていて……。
それから、見えるはずのない昌宗に連れられてビルの屋上から飛び降りそうになって……。
あの時は、本当に心臓が止まるかと思った。
自分は彼女なしにはいられないんじゃないか、と強く感じはじめていたから。