白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

「あの……?」
「隠れて取得されてもこちらからは分かりますからね」

 心の中を見透かしたようなその言葉にどきりとする。
 そしてそれがやけに悔しくなって、むっとして口を開いた。

「そんなことするはずないじゃないですか!」
「ならいいのですが」

 琥白さんは微笑むと、掴んでいる手に力を込める。

「私も、愛しい婚約者に逃げられたら困りますからね」

(その言葉が嘘くさいんだって! ついでにその笑顔も嘘くさい!)

 思わず心の中で叫んで、

「逃げませんって。疑うなら、ずっとこうしていればいいですっ!」

 怒ったように言うと、琥珀さんはまた楽しそうに微笑む。

「ええ。お言葉に甘えて、まだもう少しだけ、こうさせていただきます」
「ご勝手にどうぞ」
「ありがとうございます。そういうところも好きですよ、ふたばさん」

 そう呟いたかと思うと、ゆっくり目を瞑り、すぐに寝息を立て始める。がっしり手を繋いだまま……。
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