白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

 ふと気がつくと、琥白さんはまじめな顔で私の目をじっと見ていた。
 その目に全てを見すかされそうで、なんだか落ち着かなくなる。まるで悪いことが見つかった子どものようだと思っていた。

「今日は、なんだか雰囲気が違うんですね」
「そうですか? まさかパリで、琥白さんにお会いできると思っていなかったので、嬉しくてはしゃいでいるだけです」

 慌てる内心を覆い隠すように微笑んで言うと、琥白さんも満足げに目を細める。

「この広いパリでお会いできるなんて、まさに運命ですね」
「本当に」

 私が言ったとき、琥白さんの頼んだカクテルがやってきて、私たちは乾杯してからいつものように他愛のない話をした。

「ところで、ふたばさんのご友人の結婚式はいかがでした?」
「えぇ、長い付き合いの友人ですので、余計に感動しました。ゲストも含め、みなさんで盛り上がる雰囲気もとても良かったです」
「こちらの結婚式では二次会のようなものはないんですか」
「ありますよ。ずっと飲んで、食べて、朝まで踊っているようです。私は体力もそうそうありませんので、途中でお暇させていただきましたが」
「そうですか……朝まで踊るっていうのもなかなかいいですね。私たちの時もそうしましょうか」
「琥白さん、踊れるんですか?」
「子どもの頃、盆踊りにはよく参加しました」

 その言葉に思わず笑う。
 いつも通りの様子の彼に少し安心しながら、私は琥白さんの話を耳を傾けていた。
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