白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
夜も更けてきて、私が席を立とうとすると、琥白さんはそれに合わせるように立ち上がり、素早く会計をして店を出た。
ホテルに戻ると、遠慮しても半強制的に、琥白さんは私を部屋の前まで送ってくれる。
部屋は一階で、部屋のドアの向かい側には中庭があった。中庭には大きな白い噴水と小さな白いテーブル、綺麗な草花がそれらを彩るように敷き詰められている。
そんなところに二人でいると、まるで映画の中のワンシーンだ。
送ってもらったお礼を言い、部屋に入ろうとしたところで、琥白さんは突然私の手首を掴む。
「来月には入籍ですね」
「……はい」
「よかったんですか。私が相手で」
その言葉に思わず琥白さんの目を見た。
「もちろんです。私は琥白さんのこと、お慕いしてますから」
「でも、まだ大人の関係にはないっていないですけどねぇ」
琥白さんはそう低い声で言い、私の手首をつかんでいる手に力を込めた。
私は彼の目に宿る強い力と、彼の纏う大人の香りに、足から崩れ落ちそうになる。
なんとか堪えて立っていても、琥白さんの手の熱が身体中に伝わってくる気がして、余計にクラクラとした目眩を覚えた。