白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

 私は結局どうやっても動けないと悟ると、やけどもしたくないので、大人しくその場にとどまることにした。

 そうしていると、シャワーを浴びたばかりの自分ではなく、琥白さんから懐かしいような、落ち着くようないい香りがすることに気づく。
 琥白さんのことは苦手なのに、琥白さんの香りは嫌じゃないと思ってしまって、その考えを消すように首を振って、眉をひそめた。

 そんな私を知ってか知らずか、琥白さんは、また苦笑して口を開く。

「ふたばがそういう憎まれ口叩くたび、もっと俺を惹き付けてるってわかってんのか?」
「そんなのに惹かれるって琥白さんはドMの変態だったんですね」
「ありがとう」
「褒めてないですけど」

 私がピシャリと言うと、琥白さんは楽しそうに笑って、ドライヤーを止める。

「乾いたぞ」
「どうも」

 いつのまにか髪はすっかりきれいに乾いていて、いつもの何倍もサラサラだった。
 思わずそのサラサラの自分の髪に触れて、微笑む。
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