白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
「……あ、あの、琥白さん……?」
「なんですか?」
「手を離していただけませんか?」
私が言うと、心底不思議そうに琥白さんは首を傾げて、あぁ、と呟き、そのまま私を抱きすくめた。
「あっ! えっと……そういうことじゃなくて……」
「どうして? 愛しい婚約者にこうしていてはいけませんか? 会いたかったです。あとほんの数日が待てないほど……」
「でも、その……恥ずかしいので、離していただけるとありがたいです」
私が言っても琥白さんは身体を離してはくれなかった。
あまりの長さとその力強さに焦っていると、耳元でクスリとからかうような笑い声が聞こえる。
思わず琥白さんの顔を見ると、やっと琥白さんは少しだけ私の身体を離してくれて、悪戯が成功した子どものような目をこちらに向けた。
「ふたばさんは、いつもこういう雰囲気になると避けようとするでしょう。だから少し意地悪してみたくなりました」
「それは……結婚も決まっていますし、できればそういうことはすべて結婚後でと思っていますから」
「キスもですか? まだ、触れるだけの……子どものようなキスしかしていないと記憶していますが」
そんなことをはっきり言われると、心臓に悪い。
私はできるだけ気丈な顔をして、琥白さんを見た。