白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
私は思わず顔を上げて、琥白さんを睨む。
だってあの時は……。
「あ、あれは……琥白さんが、『金賞取ってこい、取ってこないとひどい目に合わせるぞ』って脅したからですよね」
そう。昔の琥白さんは、当時小学生だった私に無理難題をよくふっかけてきた。
そして琥白さんのあまりの迫力が怖くて、私は必死にその難題をクリアしようと努力したものだ。それはピアノだけでない。バイオリン、テニス、英語、フランス語、ドイツ語、茶道、華道、書道に至るまで多岐にわたる。
「そうだった?」
「そうですよ! 琥白さんはピアノでもバイオリンでも茶道でも英語の弁論大会でも全部そつなくこなしてましたけど、私は一度も金賞なんて取れたことなかったから……。それで琥白さん、私には取れっこないだろうと思ってそんな意地悪言ったんでしょ?」
私が訝し気に聞くと、琥白さんは少し考え、ハハ、と笑う。
そして私の背を撫でると、
「でも、あの時は結局取っただろ。金賞」
と言った。